現代の野良猫として、子猫たちが選んだ生き方とは?

 

私の自宅近辺に住んでいる黒猫。

この辺りには 特定のお家でエサをもらって生活しているノラ猫もいますが、この子は別格でした。

ほとんど人との接触を持たない生粋のノラ猫です。

ゴミ置き場を荒らしている様子もなく、どうやって食料を調達しているのかが不思議でしたが おそらく狩の名人だと思います。

鳥を狙っているところを一度 目撃されています。

以前は庭で良くトカゲを見かけましたが、この黒猫の出没以来 あまり見られなくなりました。

 

 

生粋の野良猫との交流

 

季節は、晩夏を迎えましたが まだまだ暑い日が続きます。

ガーデニングの道具を片付け 物置から出てくると、
例の黒猫が 私の前に立ち止まり、妙な顔をしてこちらを見ていました。

それがまるで 困惑した時に見せる人の表情のようで
思わず「どうしたの?」と聞いてしまいました。

するとプイと横を向いて 足早にいなくなりました。

それから 数日後、
部屋のガラス戸越しに 黒猫が入り口付近のフェンスから入ってくるのが見えました。

普段は人の目をはばかりながら 足早に姿を消すのに、今日は堂々と庭を横切り 物置小屋の裏の木陰でいなくなりました。

また次の日も 決まった時間にやってきて、同じように歩いて行き 同じ場所でいなくなりました。
そしてまた次の日も。。

時には 猫が隠れるくらいに伸びた庭の草花から、頭をだしたり 引っ込めたりして狩をしているのも見かけました。

見ているのを 知っているようですが、全く気にしてない様子。

私は毎日 やってくるのが面白くなって、いつもと違う行動をとってみました。

ガラス戸を開けて、ニャーと声をかけてみたのです。

すると、あの生粋のノラ猫が こちらを 振り返り ニャーと返事をしたのです。

ノラ猫と心が交流した瞬間でしたが、それ以上 近づくことはありませんでした。

それは 今までもそうですが、おそらくこれからも食べ物を与えることはしないと思います。

子供の頃、それが当たり前のようにノラ猫に食べ物をあげようとしたら
「 その子の面倒をずーっと見るつもりが無かったら、絶対に餌を与えてはダメ」と父に言われていたからです。

ただ 自由奔放なノラ猫との あり得ないちょっとした交流に楽しさを感じていました。

 

    

 

 

突然姿を現した 子猫たち

 

そんなある日、真向かいにお住まいの猫好きの方から 声をかけられました。

「 あの黒猫 以前見かけた時は お腹とお乳が張っていたのに この間見た時はお腹が すっきり平らになってました。どこかで 赤ちゃん産んでいたみたいですよ 」

私は はっとして、急いで我が家の物置小屋に向かいました。

物置の引き戸を開き奥に入ると。。。 なんとそこには 4匹の子猫が !

クロ猫が2匹、ベージュ猫が1匹、白黒のブチ猫が1匹
それぞれが、思いのままといった愛らしいポーズで 床に転がって遊んでいました。

 

(突然でシャッターチャンスをのがしたため、その時のイメージ写真)       

  

私は 突然の子猫の出現で一瞬、息が止まってしまいました。

いったいどうして?と辺りを見わたすと、無造作に積んだ荷物の下に、外側からは見えない隠れたスペースがありました。

そこであの黒猫が 子育てをしていたようです。

今までは閑散としていた物置でしたが、今では子猫たちが遊ぶ 活気ある空間へと変化していました。

あらためて まじまじと子猫たちを見ると、

子猫たちは少し歩けるくらいまでに成長していて
とてもノラ猫の子供とは思えないほど健康的で 伸び伸びとしていました。

この暑い最中、よく育てたなあ。。。子育て上手だなあ。。。と感心するばかり。

その時は、母親の黒猫は不在でした。

母猫が不在の時は 隠れた子育てスペースから出てきて遊んでいるようでした。

私はうっかり 上からのぞき込むように顔を近づけてしまい 子猫たちを 驚かせてしまいました。

びっくりした子猫たちは ゴソゴソと荷物の下の隠れた育児スペースへと向かいました。

3匹が隠れたところ、最後に一番体の大きなクロが こちらを振り返りながら姿を消しました。

私は ひょっとして子猫たちが 怯えているのではないかと 耳をすまして様子をうかがうと、
遊び足りないのか 中で駆け回る気配と、 小さな爪で床を引っ掻く音が聞こえてきました。

実際 子猫たちには 警戒心というものがないのかも知れません。

 

犬派のお隣のご主人と 地域のノラ猫事情

 

母乳を上げるために 黒猫が 毎日足繁く通ってきていたことはわかりました。

しかし 物置は普段は締め切った状態なのに 一体どうやって入ったのか不思議でした。

その答えは お隣のご主人が教えてくれました。

物置の出来事にあわてている私に気づき、垣根越しに声をかけてくれました。

第一発見者はお隣のご主人の愛犬でした。

どうやら裏側にある天井近くの小さな窓を出入り口にしていたようです。

黒猫が小窓から侵入するのを見つけると 愛犬が窓越しで けたたましくほえていたそうで、心配していたそうです。

お隣のご主人「野良猫が窓から侵入しているようだけど大丈夫? 野良猫のアジトになると そのうち子猫でも産まれてきて大変なことになるよ」

いえ、、、子猫はもうすでに産まれてました。。。

子猫の存在を知るといきなり怪訝な顔になったお隣のご主人に、私はイヤな予感がしました。

この辺りは 閑静な住宅街。

自然の多い街並みにノラ猫の姿も溶け込んでいるように感じていた私は、ノラ猫公認という認識でした。

黒猫とよく一緒にいたベージュ色のオス猫は(おそらく子猫の父親のうちの1匹) 人懐こくて近隣の住民に可愛がられていました。

ある日、斜め向かいのお家の駐車場に 今時どこで入手したのか黒いレザートップの車が入庫していました。

それ以来 そのビロードみたいな屋根で ベージュ色のオス猫が気持ちよさそうに昼寝をしているところを見かけるようになりました。

車の屋根で昼寝をするのが好きなノラ猫のために わざわざレザートップに変えたそうです。

これほどの猫好きが存在する以上、その対局が存在するのは世の常です。

犬派、猫派とあるように お隣のご主人は当然ながら犬派でした。

愛犬とノラ猫との険悪な関係にかなりのストレスを感じていたようです。

さらに、ご主人はノラ猫事情に精通していました。

元 役所に勤める 役人だったからです。

飼い主のいない猫対策は 役所の行政の取り組みでした。

猫の繁殖力は ものすごく強く、
可愛いからといってエサを与えていると一年後には そこら中がノラ猫だらけになってしまう。

ノラ猫が増えすぎると 排泄物の匂いや繁殖時の鳴き声などで 住民の生活をおびやかすようになってしまう。

ノラ猫の面倒をみるのなら、避妊去勢手術をして繁殖できないよう責任を持つように。

人の生活環境を重視した お役人さんらしいご意見でした。

半ば 説教をもらったような感じで 少し落ち込んでしまいましたが、先ほど見た子猫の姿に心の中は高揚していました。

 

 

子猫を飼うとしたら?

 

私は あまりビビリもせず 悠々とした一番体の大きなクロが すっかり気に入ってしまいました。

ここで 美味しそうな子猫用のキャットフードを与えたら 簡単に私の手の中におさまりそうでした。

私の中で猫を飼っているイメージがふくらみました。

まずはじめに、 捕獲したのち どうぶつ病院に連れて行き 健康状態を見てもらう。

獣医さんから 健康状態や成長の度合いに合わせた食事などのアドバイスをいただく。

食事、トイレ、睡眠時の環境がそろえば 子猫との同居生活がスタートします。

多くの方のサイトなどで 猫にとって良い情報や 成長に合わせたしつけや必要なもの等、提案してくださっています。

サイトで有益な情報を入手するたび 現実感がわいてきて、気分は上々でした。

そして 実際に猫を飼っている友達のリアル体験は さらに大きく私の心にひびきました。

「猫は絶対に飼ったほうがいい!」

幼少の頃から現在まで 30匹の子猫を育てた経験のある幼なじみの言葉でした。

彼女が言うには、育てたすべての猫に共通しているのは「猫は家族の中で一番弱っている人の側に寄り添う。」

家族の中で 風邪をひいて寝込んでいる人、タブレットを落としてしまって落ち込んでいる人と、必ずその人の側によりそっているのが猫だそうです。

彼女にとって愛すべき猫ですが、悲しい体験もありました。

ある日、家の外を出歩くことが好きな猫が 小さなキズを負って帰ってきました。

その後の状態で 猫エイズに感染していることがわかりました。

しばらく永らえましたが、寿命を縮める結果となってしまい心を痛めたそうです。

そのことがきっかけで 現在飼っている猫は外出させず、家で中で生活させています。

1日の大半はゲージの中で過ごしていますが、
「この猫にとってはこれがベスト!」

30匹育てた彼女の猫談義には かなりの信憑性がありました。

ゲージの中にいるにも関わらず ほとんどストレスもなく実に幸せそうであります。

「猫は生活環境に順応しやすく あんがい素直な動物なのです!」

 

 

ノラ猫の子猫を育てた友達

 

東京在住の友達に物置で産まれた子猫たちの話をすると、猫を育てた彼女自身の体験を話してくれました。

友達の猫は4匹。

獣医の処方で それぞれの健康状態に合わせて 別々のエサを与えています。

お腹が空くと1匹づつ順番に食事をとる行儀の良い猫たちですが、4匹とも元はノラ猫の子供でした。

庭でノラ猫が出産してしまい 扱いに困り果てたその家主が子猫たちを 動物病院に持ち込みました。

保健所に持って行かなかったことが幸いでした。

短期間で里親が見つからないと、殺処分になるからです。

愛情深い獣医さんは里親を募集してくださり、生後3ヶ月となった頃 友達が引き取りました。

2匹の姉妹をウメ、モモと名付けました。

その後突然 友達の友人から子猫を1匹、面倒みてほしいと連絡がありました。

友人が犬の散歩途中、道ばたに段ボール箱がころがっていたので 何だろう?とうっかりフタをあけてしまったそうです。

すると中から子猫が出てきて後を追ってきました。

飼い主があるかもしれないので ふたたび箱に戻すのですが 困ったことにどうしても付いてきてしまう。

しばらく様子を見ていましたが、どうやらお腹を空かしたノラ猫のようでしたので 友達に助けを求めました。

すでに2匹の子猫で手一杯だった友達でしたが、引き取ってしばらく様子をみることとなり、ユズと名付けました。

ユズは見た目はとてもかわいい子猫でしたが、一匹オオカミ的な性格で 人との信頼関係をきずくには 少し時間がかかりそうでした。

さらに困ったことに ウメとモモは姉妹なのでとても仲良しでしたが、後から加わったユズに攻撃的でした。

一方のユズは、ウメとモモに威嚇するようになりました。

双方の相性のわるさに困った友達は、 やはりユズは他の里親に相談して引き取ってもらおうと、家族会議で話し合い 手放すことに決まりました。

手放すことと決まったその晩から、今までなかった事がおきました。

就寝時、ユズが母上の布団にもぐりこんできて、甘え始めたのです。

始めは母上も いきなりのユズの変化に不気味がっていましたが、毎晩甘えにくるのが可愛くてしょうがなくなりました。

母上の「ユズは手放さない」の一言で 引き続き 家族で面倒を見ることになりました。

猫の気持ちは計り知れませんが、ユズがこのお家にとどまるための必死のアプローチだったことは間違いありません。

一方 あいかわらずユズとウメモモ姉妹は仲が悪かったのですが、
4匹めのクリを飼うことになって 状況がかわりました。

クリは 帰路途中の友達の後ろをまとわりつくノラ子猫でした。

ついに家までついて来て そのまま居着きました。

ユズとクリは 家猫になるまでの素性が よく似ているところも不思議なご縁です。

クリを加え4匹になったことによりユズとクリ、 兄弟であるウメモモとの相対関係がよくなりました。

翻弄されながらも 受け入れ愛情をそそいで育てた友達、今は逆に猫から沢山の愛をもらっています。

人は この猫を飼おう!という自覚のもと飼っていると思いますが、実は猫の方も飼い主を選んでいたというのも事実なのかも知れません。

ナショナルジオグラフィックに興味深い記事がありました。

“ 家猫の 拡散に関する研究の一環として行われたDNA分析から ネコは人間が家畜化したのではなく、自ら人と暮らす道を選んでいたことが明らかになった。

人間がネコを捕まえてきて檻に入れたわけではありません。

つまり人間は、いわばネコが自ら家畜化するのを ただ好きなようにさせておいただけということになる。”

かつて 倉庫に保存された麦などの農作物を求め住みついたネズミを目当てに、人の住む環境に近づいた猫。

もともとは野生のヤマネコでした。

農作物を荒らすネズミ、それを狩る猫は人にとって有益であり 人と猫の共存は 自然なものだったとも言えます。

 

 

母猫の威嚇

 

家族の反対もあって 子猫を飼えるかどうか決めかねている私でしたが、物置をのぞきに行くのが楽しみで 日課となっていました。

その日は いつもより少し奥に入ってみました。

すると 頭の上からシャーという音が聞こえてきたので 思わず見上げると、
それは天井近くの小窓から侵入してきた母猫の威嚇ポーズでした。

さすが生粋のノラ猫、かなりの迫力でした。

このまま物置を乗っ取られるのではないかと 良からぬ妄想を抱かされるほどの形相でしたが、ノラ猫と争うなど本意ではありません。

とっさに私は タナに置いてあった棒を手に取り 母猫のほうに向けてかざしてみました。

すると 母猫が一瞬ピクリとしておとなしくなったので、
棒を下ろしてコツリと小さくタナを叩き、すぐに元の場所に戻しました。

言葉が通じない相手に 私が全く危害を加えるつもりがないことの精一杯の意思表示でした。

そして友好をあらわすために 目を細めて 「大丈夫だよ」と声をかけてみました。

母猫は すぐに天井近くから下へと降りてきて 子猫たちが遊んでいたフロアーに座り込みました。

意思が通じたのか、目をトロンとさせ だらんと垂れ下げた脱力気味のしっぽをゆっくりと動かしていました。

それは 猫の友好サインともとれるリラックスポーズでした。

そしてニャーーと可愛い声でないてみせました。

ノラ猫が こんな意思表示をするのかと信じられませんでしたが、子猫たちを守るための必死の策だったのかも知れません。

お願い。。。と言われているような気がして 私はゆっくりと物置を後にして家に戻りました。

その時 小さな窓では子猫たちの出入りが不自由かとも思い 引き戸をほんの少しだけ開けておきました。

それ以来、見て見ぬふりのつかず離れずのノラ家族との共存生活が始まりました。

そして静かに数日がたちました。

いつものように物置へ向かうと 突然猫家族がいなくなっていました。

昨晩 引っ越ししたのでしょう。

去る者は追わず来る者は拒まずという心情でしたが、さすがに居なくなると寂しかったです。

それから 猫家族は姿を見せなくなりました。

そして数日後、また真向かいにお住まいの猫好きの方から声をかけられました。

「ここから少し離れた場所だけど、黒猫を先頭に子猫が4匹 たてに並んでぞろぞろ歩いているのを見た人がいて教えてくれました。人目気にせず 堂々と歩いていたらしい」
と笑っていました。

私も猫たちが歩いている姿を想像して笑ってしまいました。

 

 

母猫の母性本能

普段の生活に戻った私は しばらくして、思い出したように物置小屋の中をかたずけ始めました。

いざ片付けを始めてみると意外でした。

そこで猫が生活していた臭いや跡は全く感じなかったからです。

逆に子猫が隠れていたあたりは、不思議と清潔感がありました。

母猫が 環境を衛生的に保つためや 排泄物の臭いで外敵を寄せ付けないようにするため食糞していたことがわかりました。

ただちょっと異様なものが出てきました。

小鳥の羽根と、まさかの蜘蛛、ゴキブリを食した後の羽や足などの残骸物でした。

猫はタンパク源となるものだったらなんでも食べるとは聞いていましたが、
本当にこんなものまで食べていたとはー!と、ちょっと引いてしまいました。

といっても、これら全てノラ家族の栄養源となっていたことは 間違いありません。

歩けるまで成長して母猫の抑制がきかなくなった子猫たちは 私に見つかってしまいましたが、
それまでは子育ての気配を消し、衛生面、栄養面と 子猫を守りきった母猫の母性本能を まざまざと見せられたような気がしました。

 

 

大人になった子猫たちとの再会

 

日々の生活の中 そのような出来事も記憶から薄れ
翌年も温暖化の影響で うだるような暑い夏を迎えました。

早朝 車を走らせている途中
まだシャッターが閉まっている老舗店の駐車場に一旦停車しました。

ふと見ると 半分壊されたブロック塀のてっぺんに1匹の若い黒猫の立ち姿がありました。

(カメラをむけると草むらに隠れてしまうため、立ち姿のイメージ写真)

車が入って来たのが気になったのか、じーっとこちらを見ています。

車から降りて近づくと 石の陰からさらに3匹の猫が現れました。

それが 合わせて 黒2匹、ベージュ1匹、ブチ1匹
ああ ひょっとしてあの時の? 物置で生まれたあの子猫たち??

すっかり大人になっていました。

あれ?ちょっとなんだか変だな。。。と、よく見ると
4匹とも 耳の先が桜の花びら型にカットされていました。

避妊、去勢手術を施された印でした。

他にも耳先を花びらカットされた数匹のノラ猫がいました。

駐車場のとなりは 無人となった旧公共の建物、ここはノラ猫のアジトでした。

その後、 地元情報ツウのお寿司やさんから教えてもらい 知りました。

ノラ猫にエサを与えている人がいたらしく あっという間に猫が増えていったそうです。

この辺りの住民で協力して どうぶつ病院で避妊去勢手術を施してもらったそうです。

住民にとっては大変な取り組みだったようですが、猫たちはとても健康そうでした。

偶然にも 今日再開できた大人になった子猫たち、元気に生きていました。

ただ、あの強烈な印象を残した生粋のノラ母猫とは別の生き方となったようです。

こちらを見つめる目がとても印象的でした。

(最後にクロとブチがカメラにおさまってくれました)

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